● 地域の現状・課題
・羅臼町は北海道東部にある知床半島の東側に位置し、海域も含め、世界自然遺産に登録されている地域である。
・26km沖合には北方領土の国後島を望み、この中間点が事実上の国境となっている。
・基幹産業は水産業であり、サケ定置、刺網、根付漁業が水揚げの中心で、令和2年度の水揚げは63億円である。
・近年、トドなどの海獣類の出現や流木や流氷等の漂流物が漁船の航行や操業に悪影響を及ぼしており、漁船の衝突防止や操業時の安全確保が喫緊の課題となっている。
・特に、国境海域までの沖合で操業する汽船漁業者にとっては、これらの情報は安全航行・安全操業を行う上で、欠くことのできない情報であり、情報精度を高めるために、汽船漁業者が一体となって監視活動組織を立ち上げた。
・活動は環境の保全や、延いては海洋生物の保全に役立つものと理解が得られている。
活動位置図、協定海域
● 活動の内容
・海域の異常を早急に発見し、いち早く対応できる体制を整えることを目的に平成30年度に組織を設立し、監視活動を行っている。
・監視活動は流氷がやってくる厳寒期を含む10月~3月に集中して行っており、平成30年度と令和元年、及び令和2年度にはそれぞれ延べ6,500名、6,659名、 6,041名が活動にあたった。
・海上監視海域:羅臼町知床岬~峯浜町沖合
・海上監視面積:50㎢
・陸上情報集約は、年間44~47回行い、海上における異変の把握に努めた。
海上監視に向かう漁船団、向かいは国後島
海上監視(刺網船団)
● 活動の効果
・監視体制は一定水準に保たれている中、環境異変に係る報告は平成30年が44件、令和元年が74件、令和2年が73件と変動は少なかった。
・報告のほとんどはトドなどの海獣類の出現である。
・定置関係では、流木の事例が多いが、自前で処理する体制が構築された。
・監視活動により、ベテラン漁業者には安全操業の再認識が、若い世代には安全操業に対する意識付けが進んだ。
流氷上で体を休めるトドの群れを確認
海上から引き揚げられた流木の数々