葉山アマモ協議会(神奈川県葉山町)

● 活動項目

藻場の保全

● 組織の構成

漁業者、葉山町漁協、地域ダイビングショップ、葉山一色小学校、鹿島建設(株)(41名)

● 地域の現状・課題

(現状)

 相模湾に面する葉山の沿岸域は、岩礁を中心とした磯を中心に、転石地、砂礫地、砂地など変化に富んだ複雑な地形からなり、黒潮による外洋水の影響を受けるため、潮通し良く、漁場に適した環境です。

 主な漁業は、刺し網によるイセエビやサザエ漁、タコ壺やカゴ網によるタコ漁、延縄漁、素潜りによるサザエ、トコブシ、アワビ漁、小型定置網によるアオリイカ漁などを行っており、養殖はワカメを主体としています。

(課題)

 近年の海水温上昇や台風の大型化、食害魚の影響により、カジメ、アラメなどの海藻資源が減少傾向にあり、漁獲量の衰退にも影響していると考えられます。

 嘗ては葉山沿岸で広域に分布を確認していたアマモ、カジメ・アラメなどの大型海藻の保全・再生が重要と考えています。

葉山の潜り漁  3年ほど前まではアラメが群生していた

食害によるアラメの衰退が深刻である

葉山のアワビ(潜り漁)

葉山の朝市で啓発活動

● 活動の内容

藻場の保全活動

〇地域ぐるみでのアマモ場の保全

 地域のアマモ場は、夏場の高水温、台風、食害により衰退しています。15年にわたり、地域の葉山一色小学校で地元アマモ種子を用いた種苗を作り、衰退した海域に植付けを行っています。従来は、アマモを春先に植え付けていましたが、近年は高水温を避けた秋〜冬にかけての植付けを行っています。

〇ダイバーによるカジメ群落の保全

 協議会では、水深15~20mの深場に生育する希少なカジメ群落の保全を行っています。2018年にアイゴによる食害により全滅したエリアに、スポアバック法(成熟したカジメの葉を入れた網袋を設置)を適用し、海中林の復活を行ってきました。また、アラメが衰退した浅場のエリアでは、ムラサキウニの駆除活動を定期的に実施しています。

地域の小学校におけるアマモの種苗生産

発芽促進による効率の良い種苗生産技術を適用

漁業者によるアマモの保全

● 活動の効果

〇地域ぐるみでのアマモ場の保全

 15年間続けているこの活動では、地域の子どもたちが海洋環境への高い関心を持ち、葉山の海の現状、藻場が水産生物を育む重要な場であることを知るきっかけとなっています。

 周辺海域では、アマモはほぼ消失していますが、本活動で保全している区域(真名瀬漁港)ではアマモ場の継続的な維持がなされています。

〇ダイバーによるカジメ群落の保全

 2018年に消滅したカジメ群落は、スポアバック投入後に再び再生を確認出来た。現在は定期的なモニタリング、ガンガゼの駆除等により被度の増加を確認している。深場のカジメは、台風や高水温の影響を受けにくいことが成功の要因であると考えられますが、浅場のアラメの再生が今後の課題です。

(今後の課題)

 温暖化に伴う高水温・台風・食害など複合要因によるアマモの生存への脅威は依然としてあり、地元の海藻・海草の遺伝子を後世まで絶やさない様な順応的な管理や技術開発が必要です。また、浅場でのウニの除去効果が見えない点も課題であり、重点エリアの設定と駆除の適正な評価、手法の根本的な見直しも検討しています。

 

 

海の出前授業

カジメの消失状況(2018)

カジメの再生状況(2020)

スポアバック設置では漁業者とダイバーによる協働