● 地域の現状・課題
- 大槌町は三陸沿岸部中央に位置し、太平洋に面している。
- 平成29年頃から、藻場が喪失する磯焼けが見られ始め、アワビ・ウニ等の磯根資源の水揚量が著しく減少。原因究明のため検証した結果、ウニの食害が要因として大きいことが分かった。
- 磯焼けへの早急な対策が求められたため、令和元年度に大槌町が主体となり地域住民の有志で磯焼け対策活動を開始。
- 令和2年度末に、活動エリアでの藻類の再生による磯焼けの改善が見られた。
- 2年間の町事業での活動実績をもとに、令和3年度に活動組織「大槌町藻場再生協議会」が発足。以後、豊かな海を守るため、藻場再生協議会が主体となって藻場の保全活動を本格的に開始した。
ウニの食害が進む藻場(2022年9月27日撮影)。浅瀬に残る藻場に向かってウニが登ってきている。
藻場が完全に消失したエリア。通年で同じ光景が広がっている。
下からウニの食害が進む様子(2021年11月撮影)。
ウニ・アワビの水揚量・水揚げ金額・単価の推移(漁協業務報告書より作成)
● 活動の内容
- モニタリング:定点観測ポイントを設定し、ウニの密度管理による藻場の保全状況を確認している。
- 母藻の設置:海底に固着したU字ボルトに、胞子が出る合図である子嚢班が確認できるコンブの端材と浮きを入れて固定している。
- 海藻の種苗設置:ロープの間にコンブ種苗糸を取り付けたもの海中に設置している。
- ウニの密度管理及び食害生物の除去:過密なウニを適正な個数にするため、磯焼けエリアのウニを移植・駆除を行っている。
- 地元小中高生の教育・学習活動:地域学習の場と連携し、「磯焼け」「海洋環境」をテーマに磯焼け対策活動体験を取り入れた授業を実施。
定点モニタリングの様子
母藻設置の様子
コンブ種苗ロープ・スポアバッグ(種苗袋)設置の様子
ウニの適正な密度を保つため、移植・駆除を行う
● 活動の効果
- 活動を行った結果、磯焼けが進行していたエリアにおいて藻場の再生が確認され、アワビ稚貝の生存数の増加等が確認された。
- 漁業者からは、磯焼け対策活動による藻場が再生と、アワビやウニ等の資源が回復されているとの声が聞かれている。
- 活動による成果が認知され、地域住民と地元業業者で理解醸成が進み、活動に協力的な地域住民や漁業関係者が増えてきた。
磯焼けにより藻場が消失していたエリア。藻場が再生し、アワビ稚貝の生存が確認されている。
磯焼けにより白い岩肌が多かったエリア。対策活動後、天然コンブが大量に繁茂していた。
地元小学生の地域学習の様子。収拾したコンブ端材に出ている「子嚢班」を実際に確認している。
地元小学生の地域学習の様子。コンブ種苗のロープへの取付や、スポアバッグ(種苗袋)作成体験をし、藻場が再生される過程について学んでいる。