● 地域の現状・課題
・兵庫運河は、神戸市兵庫区にある5つの運河の総称であり、これら5つの運河を併せた水面積は約34haで日本最大級である。
・運河は、明治時代につくられ、その周辺は大正から昭和初期にかけて一大商工業地域へと発展した。
・町が発展するにつれ、運河の水質汚濁が進行し、高度成長期には生物の住める環境ではなくなった。また、メタンガスの発生による悪臭被害など社会的問題へと発展した。
・地先沿岸で行う漁業については、これまでの獲る漁業だけでは経営が難しく、環境保全・再生を含めた育てる漁業への転換が求められるようになった。また、地先の漁業や沿岸の現状について地元住民がほとんど理解しておらず、その普及・啓発も大きな課題となっていた。
兵庫運河における主な活動場所の風景
● 活動の内容
・神戸市における天然アサリ及び潮干狩り場の復活を目的に、網袋を活用してアサリ稚貝を効率的に捕集し、保護・育成する取り組みを実施した。
・「海のゆりかごづくり」による生物多様性の向上を目的に、近隣の舞子漁港の天然のアマモ場から栄養株を採取し、運河の干潟に植え付けを実施した。
・同様に「海のゆりかごづくり」による生物多様性の向上を目的に、竹や柴を束ねて、その束ねた粗朶を運河に設置し、イカ類などの産卵場や稚魚の育成場を一定期間創出した。
・都市住民の地先沿岸や水産業への興味・関心を喚起することを目的に、地元小学校3 年生を対象に、アサリの育成試験と生き物観察会を3ヶ年にわたり、年2回実施した。
稚貝捕集用網袋設置作業の状況
学習会の状況
● 活動の効果
・網袋による稚貝捕集を実施したことにより更なるアサリ資源量の増大が期待できた。
・毎年30 株程度アマモを移植してきたことによりアマモが活着し、平成29年5月には花穂(アマモの花)もつくようになった。
・設置した粗朶沈床では、これまでコウイカやアカニシの産卵、メバル稚魚・タケノコメバル・マナマコなどが確認されており、産卵場や稚魚の育成場としての効果を発揮していると評価できた。
・平成29 年度に実施した学習会では、干潟の生き物観察においては、26種の生物を確認することができた。
・今後は、さらなる生物多様性の向上、資源増大等を目指し、地先沿岸環境も含めた一体的な里海再生の検討を深めていく必要がある。
網袋による稚貝捕集の効果
粗朶沈床におけるコウイカの産卵