● 地域の現状・課題
尾道市南東部の浦島地区では、農業や漁業が地域産業の主体となっており、漁業はアサリや刺網、小型定置網などが営まれてる。
・海岸線には国や県が造成した人工干潟が複数あるのが特徴で、そこではアサリを中心とした漁業が行われている。
・現在、干潟における砂の移動、クロダイ・エイ類等による二枚貝の食害、松永湾内の一大アサリ生産地「山波の洲」における資源量減少による幼生供給量の低下によって、アサリ資源が大きく減少しており、干潟の生産力や生物多様性機能の劣化が懸念されている。
尾道市におけるアサリ漁獲量(t)の推移
● 活動の内容
・干潟に浮遊する幼生や、波浪で巻き上げられ飛来する初期稚貝を確保するために、10 月末~2 月の期間中に「網袋」を設置した。
・クロダイなどの食害、砂の移動による稚貝の消失を防ぐために、干潟上に「被覆網」を設置した。
・かつてのアサリ一大生産地「山波の洲」を有する松永湾側は、その資源再生が未だ課題となっていることから、H30年度から新たに活動場所を1 地区設け、アサリ資源再生の取り組みを試験規模でスタートした。
・効果の高い被覆網による試験を実施し、アサリの生息状況だけでなく、網の種類、張る方向などの検討も併せて行うことにした。試験は、視認サイズの稚貝が確認できる5月に網を設置し、開始した。
網袋を活用した稚貝の確保・保護のポイント概要
● 活動の効果
・当該地区の観音地先では、H22 年以降、アサリの漁獲がほとんどされていなかった。しかし、H25 年度から資源回復に向けた取り組みを開始してから、被覆網内で順調に回復し、H29年度は3.5 トン、今年度は1.5 トンの漁獲がみられた。本取り組みの成果によって約10 年ぶりに水揚げが可能になったことから、地区に活気が戻りつつあり、大きな効果が得られた。
・新たに追加した松永地区における被覆網試験の結果は、設置半年後の秋季のアサリ個体密度において、網なし区では本種が確認できなかったのに対し、網かけ区では100 個体以上確認された。特に、防風ネットやモノフィラメントで効果が高く、目合4mm 以上の被覆網が有効と考えられた。
被覆網試験の結果(設置半年後の秋季調査結果)