● 地域の現状・課題
- 藤曲浦地区は、山口県南西部の宇部港奥部・厚東川河口に位置しており、周防灘(瀬戸内海)に面している。
- 宇部市のアサリ漁獲量は、昭和58年の3,636トンをピークに、平成元年頃に激減し、平成14年以降には統計上「0」が続く年が多くみられるようになった。
- 当地区においても、かつてはアサリを中心とした採貝漁やクルマエビ漁など干潟を利用した漁業が盛んであったが、現在は沿岸漁業が中心となり、アサリに至っては自家消費程度の漁業を営むだけとなっている。
- アサリは地先の干潟を代表する生物であり、その回復を図ることは干潟の生産力の向上につながるとともに、かつての地区の干潟漁業の基幹になっていたことから、その資源回復が喫緊の課題となっている。
宇部市におけるアサリ漁獲量の推移
● 活動の内容
- アサリなどの干潟生物の回復を目指し、以下の活動を実施している。
- 被覆網の設置
干潟に被覆網を設置し、自然に定着したアサリ稚貝などをナルトビエイやクロダイの食害から保護し、その生残の再生産を促している。網の目合は20mmのものを中心に使用し、砂の堆積を軽減するために被覆網内部にカゴを設置したり、網自体をテント状に持ち上げることで、網と干潟面に隙間ができるように工夫している。 - 耕うん
被覆網内の地盤の硬化を防ぎ、アサリ稚貝の定着を促進している。アサリへの負荷を抑えるため、熊手で砂をひっくり返す方法を採用している。 - 稚貝の移植や網袋による確保
稚貝移植もしくは網袋を活用した稚貝確保を行い、被覆網内のアサリ稚貝の密度を維持・管理し、資源の安定化を図っている。平成30年度までは山口県栽培漁業公社より提供されたアサリ稚貝(殻長約20mm)を移植し、令和元年度からは自然発生した稚貝を網袋で確保して移植している。
被覆網の設置
網袋の製作とアサリ稚貝の移植
● 活動の効果
- 活動当初はアサリの生息がほぼ確認できなかったが、活動を行ったことで区画内では1㎡当たり300個前後の水準でアサリ資源が維持されるようになった。
- 宇部港奥部・厚東川河口部に位置していることから、砂の堆積以外にもカキやフジツボの被覆網への付着、ホトトギスガイの大量発生など、年によって様々な問題が生じている。カキの付着については小型転圧機の使用や、網の張替え時期を工夫することで改善が見られている。
- 今後も、稚貝確保を含めた被覆網対策のさらなる効率化を図りながら、順応的に活動を進めていく。
アサリ生息密度の推移
小型転圧機や塩ビパイプを使用した付着物除去