● 地域の現状・課題
・池ノ浦地区は、高知県須崎市の東側にあり、土佐湾の中東部に位置している。海岸線は、リアス式で浅場には岩礁帯の磯場が広がっている。
・かつて200ha を超す広大なカジメ場が形成されていたが、約20 年前に急激に消失し、磯焼け状態となり、1~2 トンの水揚があったアワビ採貝漁業も藻場の衰退とともに消滅した。重要な漁業資源「イセエビ」の漁獲量も年々減少している。
・急激な藻場の衰退原因は、1990 年代後半に生じたエルニーニョ現象による水温上昇や、ウニ類や魚類などの植食性動物の摂食の活発化などが考えられており、これら原因によって衰退した藻場の再生が地区漁業にとって喫緊の課題となった。
磯焼けの状況
● 活動の内容
・磯焼けと漁業生産の低迷が生じる中、池ノ浦地区と久通地区が、平成21 年度に「池ノ浦・久通磯焼け対策部会」を設立した。
・磯焼けの要因になっているウニ類を、船上、立ち込み、スキュ ーバ潜水によって除去している。
・海藻の種不足を補うために、活動当初の平成22~25 年度にかけて母藻投入を実施した。母藻は、ホンダワラやツクシモク、キレバモクで、近隣の天然藻場から採取したものを活用した。母藻は、オープンスポアバックの方法で、生分解性の布地を用いて船上から投入した。
・効果を検証するため、磯焼け対策の専門家として実績のある民間業者にモニタリングを委託している。内容は、ウニの生息密度調査と、海藻類の被度調査である。また、水産有用生物の分布状況等の把握も同時に行う。
ウニ類の除去活動状況
母藻投入(オープンスポア)
● 活動の効果
・対策前のウニ類生息密度は20個/㎡以上であったのに対し、対策後は20個を下回る年が多くなった。特に除去後すぐは10個を下回っている。磯焼けを継続させるウニ類生息密度は5~10個/㎡と云われていることから、取り組みの効果がうかがえる。
・藻場の再生については、平成23年冬季以降、対策区の浅所でホンダワラ類の着生が見られるようになり、その後は冬季の被度で30%を超える年(繁茂期の初夏は被度60%以上)がほぼ続いている。
ウニの生息密度
ホンダワラ類の被度
対策区における藻場の形成(繁茂期:初夏)
対策区における藻場の形成(繁茂期:初夏)