小田原藻場再生活動組織(神奈川県小田原市)

● 活動項目

藻場の保全、廃棄物の利活用

● 組織の構成

漁業者、小田原市漁協、NDOSA(西神奈川ダイビング事業者安全協議会)、(株)江之浦海業センター、(株)エゾン、(同)THT(58名)

● 地域の現状・課題

【現状】

・相模湾に面する小田原の沿岸域は、東側の国府津~酒匂地区は酒匂川から供給される砂による砂地が広がり、小田原漁港から西側にかけては、岩礁帯が広がっているなど、変化に富んだ底質となっています。

・小田原漁港から僅か数分で水深1,000m以上の海域に到達する程急深な地形で、水深約250mから1,000m付近に北からの冷たい親潮系の海水が流れ込んでおり、豊富な栄養がもたらされます。

・定置網漁業が主要な漁法で、その他刺し網によりヒラメ漁やイセエビ漁、サザエ漁が営まれるほか、素潜りによりサザエ漁、アワビ漁等が営まれています。

【課題】

・近年の海水温上昇や台風の大型化、食害魚の影響によりカジメが減少し、現在は消失した状態となっています。

・刺し網や素潜りによるアワビやサザエの漁獲量の減少は顕著であり、特に磯焼けの被害が大きい片浦地区でカジメの再生・保全活動を実施しています。

活動を実施している片浦地区

消失した藻場の様子 令和4年

● 活動の内容

【藻場の保全】

〇藻場礁を中心とした再生活動

コンクリートと金網で作られた約500キログラムの「藻場礁」を、元々カジメがあった漁場を中心に設置しました。「藻場礁」には、保護網を付け、その中にカジメを入れることで、生物による食害を受けづらくしました。
その他、生分解性スポアバッグを活用した母藻の設置も実施しています。

〇食害生物の生態調査に基づいた駆除活動

「何が」「いつ」海藻を食べているのか把握するため、タイムラプスカメラを海に沈め、県水産技術センターに調査してもらいました。
特に当該地域ではブダイによる食害の被害が大きい事がわかり、行動パターンが分かってきました。行動パターンに合わせて刺し網を仕掛けることで、多くのブダイを捕獲できるようになりました。

その他、ダイバーや漁業者が協力し、ウニの駆除活動も実施しています。

【廃棄物の利活用】

駆除活動で捕獲したブダイ等の魚類は、地元の大学に提供し、レシピ開発をしてもらったり、子ども食堂等に提供するといった活用をしています。

海底に設置された藻場礁 令和5年

タイムラプスを用いた魚類の調査 令和5年

植食性魚類捕獲の様子 令和6年6月

● 活動の効果

【藻場の保全】

活動開始3年目頃から藻場礁を設置した一部のエリアで、自生するカジメが確認できるようになりました。「藻場」と呼べるまでの回復までには至っていませんが、年々自生するカジメの数は増加傾向であるため、活動を継続していきたいと考えています。

【廃棄物の利活用】

ブダイは小田原における市場価格では一定の評価を受けていますが、一般的に認知度は高くない魚種であり、これらを有効に活用し若い世代に知ってもらう機会を作ることで、磯焼け等の海洋環境変化についての関心を高める事ができています。

【今後の課題】

温暖化に伴う高水温・台風・食害など複合要因によるカジメ生存への脅威は依然としてあり、活動を継続しながら新たな手法を試す事も必要だと考えています。回復の兆しが見え始めた場所は天然の岩礁帯ではなく、素潜り等の漁業活動はあまり行われない場所であるため、本来藻場があった場所にどのように藻場を再生させていくかが課題になります。