● 地域の現状・課題
- 福江島の北に位置する水ノ浦湾周辺では、魚類養殖の他、刺し網漁、釣り、採介藻漁などが行われてきた。
- かつて湾内随所に見られた藻場が消えてガンガゼ類が高密度に生息するようになり、湾内の生産性が低下したため、藻場および磯根資源の回復が求められている。
- なお、以前は湾口付近や外海側でウニ類駆除を行っていたが藻場はできなかったため、玉之浦湾での成功例を参考に2019年より主に湾内を対象とする方針に変更した。同年に湾内でガンガゼを駆除し、マメタワラの生えた礫約50個を玉之浦から貰い受けて投入したところ、さっそく翌春にはマメタワラ群落が一部にでき、関係者のモチベーションが上がった。

活動を行っている地域

春でも大型海藻は生えていない(対策開始前)

湾内はガンガゼだらけ

湾口付近には時折ノトイスズミやアイゴの群れが来遊する他、ブダイが定住している
● 活動の内容
現在は主に以下の活動を続けている。
- 食害動物(主にガンガゼ類)の駆除と母藻供給による藻場の保全、および磯根資源の回復
- 湾内に生えた海藻を母藻として活用するとともに、市内他所へ提供することで五島市母藻供給ネットワークへも貢献
- 砂泥域にアマモ場を造成するため、市内他所から母草をもらって移植試験中
- 地元小学生を対象に、磯根に関する体験学習会を開催

海藻カーペットの回収・移設作業

移設したアカモクカーペット

コロナ禍で中断していた小学生の体験学習会を3年振りに開催

ワカメの刈り取り体験に向かう子供達
● 活動の効果
- 玉之浦湾同様に当湾でも湾奥は植食魚の影響がなく、ガンガゼ類の駆除でほぼ確実に藻場ができることがわかった。
- 湾内の西部ではマメタワラやアカモク、東部ではワカメの優占する藻場ができた。現在は未利用な有用海藻の利活用や、藻場をウニ漁場に活用することを検討していきたい。
- 湾内に多いエイ類が砂を掘って索餌するために移植アマモが消えると考え、対策に支柱を立てたところ効果が見られた。
- 湾口に近くなるほど植食魚の影響が顕著で、海面で養殖試験したアカモクやヒジキが食害を受けたため、湾口や湾外に藻場を広げるには植食魚対策が必須と考えている。

浅瀬にはマメタワラとアカモクが帯状に生える

水深約4m以深にはワカメが多い

移植から1年が経過したアマモとエイ除けの支柱