● 地域の現状・課題
- 小猿部(おさるべ)川は、秋田県北部の竜ヶ森を水源に、北秋田市を流れ、米代川に合流する一級河川である。
- 河川流域は、上・中流は広い森林域で、下流は農地が広がる。川では、鷹巣漁協がアユ、ヤマメ、イワナの稚魚を放流し、これらを対象とする釣り人が県外からも多く訪れている。
- しかし近年、河床環境の悪化などからアユの資源量が減少傾向にあり、アユをはじめとした魚の餌場や定着する場所が失われていることが懸念されている。
- また、自然豊かな川であるが、現在、川遊びを行う子どもたちの減少など川離れが深刻で、河川環境や身近な自然環境に対する地域住民等の意識の希薄化が懸念される。
- こうした背景から、平成26年度に組織を立ち上げ、親水性を維持するための河川清掃を軸に、川漁体験など自然の遊びを通して河川環境への理解を深める活動を進めることにした。

ヤナ漁体験の模様
● 活動の内容
- 当該組織の主な活動は、河川清掃と体験学習、そして河川に生息する魚類のモニタリングである。
- 河川清掃として、河川流域のゴミ拾いと草刈りを実施している。年間6~7回程度行っており、漁業者以外にも地域住民やボラティアなど合計50名ほどが参加している。
- 体験学習では伝統漁法体験を行っており、専門家による座学や伝統漁法(ヤナ等7種類)の実演・説明、漁獲された魚の観察、アユや川ガニの試食を実施している。
- 平成30年度からは、河床環境を改善する目的で新たに河床耕うんを実施している。耕うん作業は年に3回程度実施しており、ショベルカーによって耕うんした後に手作業にて石の位置を調整している。

河川清掃

体験学習

河床の耕うん作業
● 活動の効果
- 河川清掃活動は、河川管理者から評価を受けており、不法投棄物の発見・処理にも貢献することができた。
- 川漁体験学習では、参加した親子が川や魚、伝統漁法について体験しながら学習でき、満足度100%の反応を得ている。また、教育関係者(市教育委員会等)からは、自然と共生してきた営みを次の世代に伝える活動を行っていることに高い評価を得ている。
- 河床耕うんを行ったことにより、モニタリングで採捕される魚の個体数が増加し、アユも採捕されるようになったことから、アユが好む河川環境に近づいているものと考えられる。
- 当該地区では、鷹巣漁協主催で“魚のつかみどり大会”を地元児童を対象に、20年以上前から開催しており、参加した子どもたちの中から漁協組合員が生まれつつある。当該組織でも引き続き活動を継続し、自然豊かな小猿部川を次世代につなぎ、自然と人間の共生が持続できたらと考える。

耕うんによってザクザクで複雑な立体空間になった河床

確認されるようになったアユ