● 地域の現状・課題
・松川浦は砂州により太平洋と隔てられた細長い入り江である。湾には、河川から豊富な栄養塩が供給され、様々な生物がそこで暮らしている。
・湾の干潟には、アサリが生息しており、1970年代後半には700トンものアサリが水揚げされていた。しかし、1980年代半ば頃から資源は減少し、その後の東日本大震災の影響により、資源はほぼ壊滅状態となった。
・アサリ資源の減少は、カキ礁の拡大による生息場の競合、ツメタ貝等の食害生物、震災後の土砂の堆積による影響が考えられ、これら阻害要因への対策が、現在、求められる

アサリ漁獲量の推移
● 活動の内容
・アサリ資源再生の対策として、カキ礁を拡大させないためのカキ殻除去や食害生物のツメタ貝(成貝・卵塊)除去を実施している。
・また、震災後の底質の変化及び悪化が問題視されたことから、干潮時に人力で海底の耕耘を行っている。
・加えて、アサリ資源量の変動を把握するため、アサリ及びツメタ貝のモニタリング調査も実施している。

ツメタガイ卵塊の駆除

干潟の耕耘

アサリ成貝のモニタリング
● 活動の効果
・2011年(平成23年)以降、東日本大震災の影響により、サキグロタマツメタの駆除活動は停止または縮小を余儀なくされた。その後、2015年に駆除活動が再開され、同種の卵塊に対する駆除量が一時的に大幅に増加したことが確認された。一方で、駆除活動の規模を拡大し、その継続的実施が行われた結果、卵塊駆除量が徐々に減少する傾向が確認され、駆除活動による卵塊駆除は親貝個体数の減少につながり、これが生息範囲の拡大や急激な個体数増加を抑制する要因として機能したと考えられた。
・アサリの資源量については、2021年のアサリ生息密度分布調査結果と過去の記録から、250t相当の漁獲量が見込め、卓越年級群である2013年級群と2017年級群が多くを占めていた。その後は、卓越年級群の発生が確認できていないため、現在の資源を維持しつつ、その増大を図る対策の検討を今後も進めていく必要がある。

サキグロツメタ卵塊駆除量の推移