● 地域の現状・課題
・かすみがうら市は、茨城県南部のほぼ中央に位置し、霞ヶ浦に面する。
・当該組織の活動場所である霞ヶ浦は、日本で2番目に面積が大きい湖である。湖は多くの生き物を育むだけでなく、漁業や水運業など古くから人に利用されてきた。
・昭和40年代、霞ヶ浦では灌漑や都市部の飲料水確保を目的とした総合開発が行われ、自然湖岸の全てがコンクリート化、また水門設置によって「汽水湖」から「淡水湖」へと変わるなど環境が激変した。
・湖岸のコンクリート化は魚介類の成育・産卵場の一つ「ヨシ原」を衰退させた。水門設置による「淡水化」は現在問題になっているウナギの遡上を激減させており、湖内生態系の修復が望まれる。
主要魚介類の漁獲量の推移
● 活動の内容
・霞ヶ浦に残存もしくは造成されたヨシ群落の保全を目的に、平成21年度に活動組織を地区の漁業者によって設立し、活動を開始した。
・ヨシ群落の保全は、刈り取り・間引きを毎年2ha程度実施している。これら作業を行うことで、競合植物や立ち枯れのヨシによる生育阻害を防いでいる。
・平成28年度からは、ウナギ資源の回復を目的に種苗放流も開始した。放流する種苗には、一部に標識を付け、その成育状況の把握に努めている。
ヨシの刈り取り
刈取ヨシの搬出
ウナギ種苗放流
ウナギ捕獲モニタリング
● 活動の効果
・冬季に刈り取り作業を行ったヨシ帯は、翌春に新芽を出し、順調に生長し、夏には良質な群落を形成するようになった。
・また、刈り取ったヨシは、陸揚し湖の系外で適正処分していることから、物質循環(チッソ・リン等)による湖内の水質浄化につながっていると評価できる。
・ウナギについては、天然遡上がほとんど見込めないことから、現在、その生息は難しい状況にある。しかし、種苗放流開始後のモニタリング調査において、本種の生息が確認されるようになり、一定の資源維持に種苗放流が寄与していると考えられた。
順調に生長するヨシ
確認されたウナギ