● 地域の現状・課題
- 北浦(36km²)は霞ヶ浦、外浪逆浦などを含めると 220k㎡の面積を有する全国第2位の湖であり、ワカサギ、シラウオ、ハゼ類、エビ類等の水産資源に恵まれていることから、古くから漁業が盛んで、また網生簀を用いた小割式養殖業、淡水真珠養殖も行われており、豊富な漁獲物から佃煮や煮干しなどを製造する水産加工業も発展し、国内有数の水産業が盛んな地域である。
- 北浦の湖岸には、かつて広大なヨシ帯が広がっていたが、高度成長期の開発事業等による埋め立てや護岸化によってヨシ帯を含む湖岸の植生帯が大幅に消失した。これらにより水質浄化機能の低下や生息魚類の減少など負の影響が顕著となった。
- 現在でも、残存するヨシやその後の自然再生事業等で造成したヨシが冬季の波浪(返し波)等による湖岸の浸食で流出し、保護柵の設置や石積みによる対策などがとられているものの浅瀬、群落の面積が減少している。またゴミの不法投棄などの問題が生じている。
- ヨシの群落は、魚介類等水生生物の生息場や育成場、産卵場など重要な機能を有し、また湖内の水質浄化にも寄与しており、豊かな北浦の自然と生態系の維持保全を目指すためにもヨシ群落の保全は霞ケ浦北浦全体の喫緊の課題となっている。
- 大洋地区活動組織は北浦北東部に位置する主に5つの箇所(安塚、梶山北、梶山南、阿玉、札)のヨシ帯の保全活動を実施している。

活動を行っている地域
● 活動の内容
- 鉾田市地先の北浦に存するヨシ帯の維持・回復を図ることを目的として、ヨシの再生産を促すため有効である刈り取りを行っている。刈り取り作業は、ヨシが立ち枯れする冬季に行う。刈り取ったヨシは堆肥化し有効に利用する。またヨシ帯の管理が行き届かないと不法投棄やプラスチック類の浮遊ゴミの漂着・沈積などの環境汚染につながるため一帯の清掃活動も行い、ヨシ帯内に堆積するゴミをヨシの刈り取り作業と併せて回収し処分している。
- ヨシの刈り取り効果を判定するため、ヨシの生育状況、被度測定などのモニタリング調査を行う。
- 北浦は護岸が整備され、遊歩道やサイクリング路も整備されており湖への接近は比較的容易である。しかし湖岸から急深となり、波浪もあり作業に危険をともなう箇所が多い。さらにヨシ刈りは胴長、草刈り機などを用い、刈り取ったヨシの切っ先が鋭利で細心の注意が必要なため、取り扱いに慣れたた専従者(漁業者)による取り組みを中心とする。
- 北浦は長大な海跡湖であり、周囲は4つの市に囲まれている。組織は4つの地区に区分(北浦、大洋、大野、大和)され、それぞれのヨシ帯の保全活動を行うことを活動方針としている。

ヨシの刈り取り作業

ヨシの刈り取り作業

ヨシの刈り取り作業
● 活動の効果
- 立ち枯れたヨシを継続して冬季に刈り取ることで翌年芽吹くヨシの生長(生育)を促進させている。令和3、4年度共に被度は6割~8割を超えており、ヨシ群落の維持が図られている。
- 北浦で漁獲されるワカサギ、シラウオ、テナガエビは年により増減している。北浦のエビ類は見た目(火を通した際の発色)が良いので結構人気がある。ヨシ帯の保全が直ちに漁獲量増大にはつながらないが、環境改善されることによって永続的な漁業に寄与することが成果となると考える。
- ヨシ帯には水質浄化機能があり、その周辺に生息する底生生物が植物プランクトンの異常繁殖の抑制や、懸濁有機物を除去する働きがあり、アオコの発生や貧酸素化を防いでいる。
- 活動当初は大量のゴミがヨシ帯内に不法投棄されていることもあったが、毎年実施しているヨシの刈り取りとゴミの回収によって湖岸がきれいになり、ヨシ帯内への大量の不法投棄が減りつつある、釣り人やキャンパ-のゴミ持ち帰りの増加といった本活動による副次的効果も得られている。
- カモ類、カイツブリなどの野鳥も増えてきている。