● 地域の現状・課題
- 白浦地区は三重県南部に位置しており、太平洋に面している。
- 地域の主な産業は水産業で、マダイ養殖のほか、一本釣り、刺網、タコカゴなどが行われており、十年以上前は、サザエやアワビ、ウニなどを採る海女漁も盛んであった。
- 地区の沿岸にはアラメやホンダワラ類が繁茂する藻場が存在していたが、数年前から刺網にガンガゼが多くかかるようになり、磯焼けが目立つようになってきた。
- 藻場の減少が懸念されたが、海女がいないため磯焼けの状況を正確に把握できずに問題となっていた。
- そんな時に、ガンガゼ除去および藻場の再生活動を行っていた『NPO法人SEA藻』を紹介され、漁業者とSEA藻が主体の「白浦活動組織」を結成し、平成28年度から藻場の保全活動を開始した。
活動区域
ガンガゼと磯焼けした海底
● 活動の内容
- 当該組織の目的は、海域の基礎生産および漁業資源等の回復・維持であり、「藻場の再生・維持」を目標に活動を実施している。
- 地区では、住民や漁業者の減少、高齢化が進んでおり、SEA藻などの協力のもと、ほかの地域からの力を借りて活動を行っている。主な作業員はSEA藻と大学生であり、そのほかの活動員として一般のレジャーダイバーにボランティアとして参加を募っている。
- 活動内容は、三重大学の藻場回復の研究成果に則り、一貫した「ガンガゼ除去」を基本として、モニタリング調査を併せて実施している。
- 過去にはスポアバックやウニフェンスの設置も行っていたが、天然藻場からの種の供給があったため、活動内容をガンガゼ除去に集中させた。
- その他にも、試験的にアラメ種苗の設置を行っている。
除去棒によるガンガゼの駆除
設置したアラメ種苗(種苗板を岩盤にボルト固定)
● 活動の効果
- ガンガゼ除去により、早期から藻場が広く回復する傾向が見られた。季節的な増減があるものの、回復した藻場が維持されている。
- 浅場などで残存した藻場から種の供給があったことや、主な食害種がガンガゼだったこと(魚類よりも被害が小さい)などが理由で、藻場の早期回復につながったと考えられる。
- その他の成果として、ほかの地域から若い人たちが参加することで地域の活性化や、宿泊などによる地域経済への貢献にもつながっている。
- 現状、活動によって藻場が回復した区域でもガンガゼの除去数は減少しておらず、藻場の維持保全には活動の継続が不可欠である。
- ガンガゼ除去を継続しながらも、活動範囲を拡大することが望まれるが、実働主体がNPOとボランティアであり、どのように継続するかが大きな課題となっている。そこで、ガンガゼ駆除の活動を水産高校の実習に取り入れられないか、働きかけている最中である。
海藻被度の経年変化
藻場回復の様子