大内山川の声(三重県大紀町)

● 活動項目

内水面生態系の維持・保全・改善

● 組織の構成

漁業者、大内山川漁協、NPO法人earthアース530、三重大学、名城大学、地域おこし協力隊(145名)

● 地域の現状・課題

  • 大内山川は三重県の中南部に位置し、高い透明度を誇る美しい川で、温暖な気候と美しい自然に恵まれた大紀町を流れ、清流宮川に注ぐ一級河川である。
  • 豊富な雨量と町の91%を占める豊かな山々が大内山川の源で、ダムがなく環境に恵まれた大内山川は町民の水資源であるだけでなく海から遡上する天然アユを始め、モクズガニ、ウナギなど沢山の水生生物を育んでおり、3月から9月は渓流釣り、5月から10月は鮎釣りで大勢の人を楽しませている。
  • 私たちは自然と神々への感謝を込めて、伊勢神宮と瀧原宮に「大内山川のぼりアユ」を奉納しており「大内山のぼりアユ」は大紀ブラントにも認定され、町のさかなにも指定されている。また「清流めぐり利き鮎会」「清流めぐり利き鮎会スペシャルインぎふ」で準グランプリを受賞している。
  • 豊かな河川環境を守り、川の文化を次世代につなげていくため平成25年「大内山川水産多面的機能発揮対策委員会」を設立し、平成28年からは「大内山川の声」として引き継がれた。

活動前の集合写真

活動前の集合写真

● 活動の内容

  • 河川の清掃活動

 大型台風や豪雨による流木や漂流物の回収、ポイ捨てされた空き缶、ペットボトル、金属類、その他生活ゴミの回収作業を行っている。

  • 定点モニタリング

 モニタリングの時期、エサ、場所など条件を同じにして、つけ瓶による対象生物の個体を調べている。

  • 藻類の刈り取り

 在来種の水草の繁殖及び生態系に影響を及ぼすオオカナダモの刈り取りをおこなっている。

  • ニゴイの除去

 雑食で繁殖力が強いニゴイは水生生物、小魚、稚鮎などを捕食して生態系に影響を及ぼすため、網、銛を使用して除去を行っている。広範囲に生息するため、年に数回の除去が必要である。

  • 教育 学習

 子供たちに、川や生き物に関心を持ってもらえるように、伝統漁法の体験、水生生物の観察、環境学習を行っている。座学を行う際は、パネルを使用してアユ、アマゴ、ウナギの生態や外来の水草について分かりやすく講義をしている。また、伝統漁法の「ひっかけ」の体験も実施している。生きた魚にじかに触れられるのはめったにない事で貴重な体験である。水難事故防止のため、ライフジャケットの着用も指導している。楽しい川遊びを通して次世代に川の文化を繋げていくことが、私たちの使命のひとつであると思う。

クレーン車によるヒューム管引き上げ

オオカナダモの刈り取り

● 活動の効果

  • 活動を開始した当初は、川の中や、河川敷に様々な生活ゴミや古タイヤ、ヒューム管、鉄屑等が捨てられていた。また台風による影響でトタン、流木、ビニール類など漂流物が堆積していた。活動を継続している効果で、3年目あたりから流域住民の環境に関する意識が高まり、生活ゴミが減少している。これからも精力的に清掃活動に取り組んでいきたい。
  • 対象生物の定点モニタリングはその年の水温で個体数に差が出ているが、河川環境のバロメータとなり貴重なデータとなっている。
  • オオカナダモの刈り取りは、平成29年度の3,850㎏の刈り取りに対し、令和元年度は1,700㎏と50%以上少なくなっている。茎の一部が切れてそこから繁殖を行うので十分気を付けて作業を行う必要がある。水量の少ない冬場の作業が効率的である。
  • 座学や体験の後に実施したアンケートでは「きれいな大内山川を守っていきたい」「進んでゴミを拾う」など前向きな意見が多かった。川遊びを通して自然の大切さを体感できたと思う。

つけ瓶に入った小魚