● 地域の現状・課題
・兵庫県香美町は、日本海を望む県北部の中央に位置する。香住地区は、底びき網漁・ベニズワイカニかご漁・沿岸釣り漁・浅海漁・定置網漁などの漁業が営まれている。
・当該地区では、特に偏西風が強くなる冬季に時化ることが多いことから、転覆や漂流ゴミなどによる船舶事故が多い。
・また、夏場の海水浴シーズンは、地元だけでなく関西圏などから多くの人が訪れることから、水難事故も多い。
・加えて、沿岸域の磯場や、沖合のカニやイカの漁場では密漁者や不審船も多くみられ、水産多面的機能の一つである日常的な漁業活動による監視ネットワークの強化が求められていた。
組織の体制
● 活動の内容
・まず、20 隻の漁船を対象に無線機器を整備し、水域監視の連絡体制を構築した。
・これら漁船で、出漁中に水難事故や密漁(不審船)、流木等の漂流物、海面の水色異常などを確認した時に記録・報告する活動を実施した。また、夏季に密漁や水難事故が増えることから、一斉監視活動を3~4 回実施した。
・平成30 年からは、水産多面的発揮対策事業において「海の監視ネットワーク強化」に対する支援がメニューに加わったことから、この活動に参加し、①連絡体制の再構築、②監視活動のマニュアル作成、③活動の記録と報告の強化を図ることで、出漁中の監視活動の更なる強化と、情報共有の充実、事故の削減を目指すこととした。
整備した無線機
監視活動後の市場における漁業者間の情報交換
● 活動の効果
・監視ネットワーク強化によって、これまで20隻だった監視船が39隻に増え、監視の範囲が特に沖合で大きく広がった。
・監視活動の記録・報告を義務化したことで、平成29年度の活動回数が181回だったのに対し、30年度は1月現在で1,677回と大きく増加した。
・緊急性はなかったが、これまで報告されてこなかった不審船情報が得られるようになった。
・現在、緊急性の高い事象が生じていないことから、異常発見時の海上での連絡は、遼船間に留まっている。漁業無線局に連絡することで、地区内だけでなくそれ以外の船など広い範囲で情報の共有化が図れることから、今後、通報のあり方について改めて理解を深める必要がある。
監視ネットワーク強化における活動状況