● 地域の現状・課題
- 王司地区は、山口県西部の下関市にあり、瀬戸内海側の周防灘に面している。
- 地先には、木屋川や神田川により形成された広大な前浜干潟が広がっており、かつては、採貝漁業やノリ養殖業など干潟を利用した漁業が盛んに営まれていた。
- 現在、干潟で営まれた漁業は大きく衰退しており、300トンを超える年が多く見られたアサリ漁獲量は、平成15年以降は統計上「ゼロ」が続いている。
- 40年以上前から組合の女性部を中心に開催してきた「海浜学習(地元小学校)」においても、「どうしてアサリがいないの?」「とれなくなったの?」などの意見が、最近、多く聞かれるようになった。
- 干潟漁業の復活を願う「漁業者」と、子供たちが笑顔になる潮干狩りを体験させ、干潟の魅力やその保全を伝えたい「漁協女性部」が主体となり、平成21年度に当該組織を設立し、アサリ資源の再生を軸とした取り組みを開始した。
● 活動の内容
- 当該組織では、干潟保全のための「アサリ資源の再生活動」のほか、40年以上前から継続している海浜学習などの「普及啓発活動」を実施している。
- アサリ資源の再生活動
約12haの活動エリアの中に1haの区画を設け、その中で①耕うん、②竹立て、③母貝団地づくりを行っている。
この1haの区画を5ヶ年計画で、毎年1つずつ増やし、着実に計画的に資源の再生を図る。
また、活動エリア全域(12ha)では、アサリを食害するツメタガイの除去を毎年行っている。 - 普及啓発活動
地元小学校の全児童を対象に「海浜学習(海浜清掃・潮干狩り体験)」を40年以上前から行っている。
この学習会に加えて、平成24年度からは小学校5年生を対象に、ツメタガイ除去の体験学習を開催し、干潟の現状やその大切さについてより深く理解してもらうことにしている。
この体験学習では、ツメタガイがどのような貝なのか、なぜ除去活動を行うのか事前に授業を行い、その後、実際に漁業者と一緒に除去作業を行っている。
● 活動の効果
- 水産多面的機能発揮対策が本格化した平成28年度以降に対策を講じた区画は、合計で4haとなった。
- 各区画内のアサリの平均密度は、平成30年2月調査で、対照区より高い状況にあり、産卵に貢献する殻長20mm以上のアサリが多く確認できた。
- 一定の成果が得られているが、干潟全体のアサリ資源量は、未だ生産につながる状態には至っておらず、今後も継続して活動を進める必要がある。
- 体験学習については、すべての児童がツメタガイ除去の必要性について理解を示し、干潟の環境や生き物、その保全や漁業について向き合う、良い機会になった。
- こうした普及啓発活動を今後も継続し、子供たちに干潟の大切さやその保全の継承を図っていきたい。