● 地域の現状・課題
- 富江地区は福江島の南に位置し、対策域は五島灘に面する遠浅の水域である。
- 定置網、刺し網、釣り、素潜り漁などが盛んであったが、近年の磯焼けの拡大によって磯根資源が減ったため、藻場と磯根資源の回復が求められている。
- ガンガゼなどのウニ類に加えて、イスズミ類やブダイなどの植食魚の影響も磯焼けの続く要因と考えられる。

活動を行っている地域

富江沿岸の岩礁帯の様子(2022年11月). 小型海藻が若干生える.

岩の隙間には短いヒジキがあるが、春になっても長くは伸びない(2022年11月).
● 活動の内容
人目に付きやすい場所にまず小規模なヒジキやアカモクの藻場を作り、磯焼け対策の効果を関係者が肌で感じられるようにすることで磯焼け対策のモチベーションを高める。その後、磯焼け対策を拡大させて、藻場と磯根資源の回復を目指す。現在の活動内容は次の通り。
- 仕切り網設置場所とその周辺でガンガゼなどのウニ類を駆除する。
- 新たに考案した亀甲網を用いた丈夫な仕切り網を設置し、耐久性を実証するとともに、仕切り区内にヒジキやワカメなどの藻場を造成する。
- 五島市母藻供給ネットワークによって他所から提供してもらったヒジキやワカメの母藻を供給する。
- 仕切り網を通年設置させて四季藻場を回復させるため、網の維持管理に努める。

亀甲網を用いた仕切り網の設置時の様子 (2024年2月)

仕切り網の海面の様子

設置が完了した仕切り網

五島市岐宿地区から提供されたワカメカーペットを区内に設置
● 活動の効果
- 網の製作に時間がかかり設置が1月になったが、3月にはヒジキやイソモクなどの藻長が仕切り区の内と外とで明らかに異なり、網の効果が予想以上に高いとわかった。
- 仕切り網の外で行ったワカメ、ヒジキ、アカモクの試験養殖では、2月に収穫できたワカメを除いて植食魚による食害で全滅した。
- 今後も試行錯誤を続け、仕切り区内にヒジキやワカメの藻場を作るとともに、網の通年維持に努めることで四季藻場の保全にも取り組みたい。

仕切り区内のヒジキ(2024年3月).

仕切り区外のヒジキ(2024年3月).

仕切り網設置からわずか2か月で、仕切り区の内と外とで大型海藻の長さに明瞭な差が生じた. ×が平均値.