● 地域の現状・課題
- 福江島の西南に位置する玉之浦湾は五島市最大の内湾で、定置網、魚類養殖、釣り、タコツボ漁、採介藻漁などが行われてきた。
- かつて湾内随所に見られた藻場が消えてガンガゼ類が異常繁殖し、湾内の磯根資源が大幅に減ったことから、藻場および磯根資源の回復が求められている。
- なお、当活動組織は2016年から磯焼け対策活動を開始し、2018年から多面的機能発揮対策事業に参入した。当初から市・県・国(水技研)や地元企業関係者による応援を得て、2020年からは磯根研が加わり、人手の足らない場合には磯焼けバスターズの協力も得て活動を継続している。磯焼けバスターズは市民有志をメンバーとする磯焼け対策応援チームで五島市の運営による。

活動を行っている地域

玉之浦湾内の岩礁には、足の踏み場もないほどガンガゼ類が密集している
● 活動の内容
- 岩礁域には海藻藻場を、砂泥域には海草藻場を造成するため、食害動物(主にガンガゼ類)の駆除と母藻草の供給を続けている。また、効率的な母藻調達のために作られている五島市母藻供給ネットワークに参加し、当湾で得られないアマモなどを市内他所から譲り受けるとともに、他所から要望のあるヒジキやマメタワラ、アカモク等を提供している。なお、専門家によるアドバイスも参考に毎年度当初には活動内容を幹部で協議・決定している。活動初日には専門家による説明会を開催して対策の進捗状況や課題に関するメンバーの理解を深めた上で、幹部が対策方針を伝えることにしている。
- 効果的かつ効率的な藻場造成を進めるための取り組み
・造成された藻場の海底に古網を置き、1年後に海藻が密に生えたものを移植用に用いる「海藻カーペット」の作成・活用試験に2018年から取り組んでいる。
・数年に渡って造成された藻場の一部をウニハードルで囲い、その内部のみガンガゼ駆除を休止する実験に2019年から取り組み、駆除効果の持続性を検証した。
- 磯焼け問題と対策状況に関する学習用資料を作成して地元中学校に提供している。

専門家の説明を受けて、対策の進捗状況と課題に理解を深めるメンバー

対策前の幹部による方針説明

浅瀬を担当する素潜り班

深場を担当するSCUBA潜水班
● 活動の効果
- 活動を通じて、湾内では植食魚の影響が小さくガンガゼ類の駆除と母藻供給で確実に藻場ができることがわかり、対策域を年々拡大した結果、藻場も年々拡大して2023年春には湾内6か所の計13haに達した。
- ガンガゼ駆除休止実験によって、駆除を2年休止しても問題ないが、3年休止すると磯焼けに戻ることが判明したため、2023年からは藻場が数年続いてできた場所で1年の駆除休止期を設けることとし、その分の労力や資金を新たな場所に投入できた。
- 海藻カーペットは高密度な母藻移植が簡単にでき、藻場づくりにも効果的なことがわかり、毎年5~10枚を作って活用している。
- 湾内にはガンガゼ類の未駆除域がまだ広く残っており、これまでの活動成果を生かしつつ、更なる藻場造成と藻場面積の拡大に努めていきたい。なお、藻場の復活でアカモクなどの有用海藻が増えてきたため、現在未利用となっている資源の活用も検討していきたいと考えている。

このアカモク群落はGoogleの衛星写真にも捉えられている

こちらはマメタワラの帯状群落

海藻カーペットの仕様

湾内にできた藻場の面積の経年変化