芦北地域アマモ場再生・保全活動組織(熊本県芦北町)

● 活動項目

藻場の保全

● 組織の構成

漁業者、芦北漁協、芦北高校(7名)

● 地域の現状・課題

・芦北町は、熊本県の南部に位置する。町には緑豊かな山々が連なり、かつては坑木林業が盛んに行われていた。しかし、石炭業の衰退とともに坑木林業は低迷し、代わりに甘夏みかんやデコポン栽培が盛んになり、県内有数のみかん類の産地となっている。

・町には、大関山を源とする佐敷川と湯浦川があり、町の中心部を流れ野坂の浦を通じて、八代海へ注いでいる。野坂の浦には、かつて広大なアマモ場があったが、坑木林業の衰退と、マツの害虫被害によって山林が荒れたうえ、みかん畑の開墾によって河川から濁水や土砂が流入し堆積したため、大きく衰退した。

アマモ場の衰退イメージ

● 活動の内容

・活動方針の大きな柱は、漁業者と熊本県立芦北高等学校林業科の学生・教員の協働体制づくりである。

・アマモ場の再生活動は、残存するアマモ群落を活用して、かつてアマモの大群落があった場所で移植法と播種法によって実施。活動当初は、移植法では粘土法、割り箸法、実生ポット苗法など、播種法ではコーヒー豆の袋「ドンゴロスマット」を活用した手法を実施した。

・現在は、芦北高校林業科が独自に考案した播種「ロープ式下種更新法」を用いた取り組みを主に行っている。

・泥分の多い場所では、アマモの定着が悪く、未だ課題となっていることから、カキ殻敷詰法による試験を新たに開始した。

● 活動の効果

・活動当初、野坂の浦にはアマモ場が0.25ha 残存するだけであった。しかし、取り組みによって、アマモ場が徐々に拡大し、平成21 年には面積が0.44ha となった。その後、アマモ場は、ロープ式下種更新法の技術確立にともない急激に拡大し、平成30 年には活動当初の20 倍、5.0ha まで広がり、大きな成果となった。

・アマモ再生活動は、林業科学生にとって机上では経験できない貴重な体験になっている。また、全国アマモサミットや日本学校農業クラブ全国大会で発表したり、小学生や園児を対象にアマモ教室を開催したりしている。

野坂の浦におけるアマモ場面積の推移