● 地域の現状・課題
- 姫島地区は、大分県の国東半島の北部沖6kmに位置し、瀬戸内海の伊予灘、周防灘に面した島である。
- 地区には、「漁業期節」と呼ばれる水産資源の管理やその手法に関する独自の定めが、明治時代からある。
- その定めの一つである『藻刈りの規制』は、海藻が畑の肥料として多く刈り取られていた時代に、海藻を獲りすぎると沿岸の魚介類が育たなくなるといった認識から実施され、この規制により藻場を大切に維持管理してきた。
- 化学肥料等の普及に伴い、『藻刈りの規制』はなくなったが、藻場を保全することで水産資源が育まれるといった認識は、今も漁業者の間で根強く引き継がれている。
- 全国で報告される磯焼け海域に比べると、大きな藻場の衰退はみられないが、以下のことが懸念され、姫島地区の水産資源を支える藻場の維持管理が求められている。
①約30年前に比べて藻場面積が2割ほど減少した
②漁獲対象外のムラサキウニが近年増加した
③魚が減ったことで藻場を構成するヒジキの漁獲圧が高まった
④近年の異常気象(高水温等)などによる藻場の衰退
⑤藻場への悪影響を及ぼすアイゴが増加した
● 活動の内容
- 姫島地区の漁業者が中心となり、平成28年度に「姫島地区藻場保全活動組織」を設立し、藻場の維持を目的に活動をスタートした。
- ウニの除去
漁獲対象となっていないムラサキウニが増加しており、藻場への悪影響が懸念されている。スクーバ潜水で手かぎを用いてウニを採取し、陸揚げする。除去したウニは、肥料として有効活用している。 - 岩盤清掃
ヒジキなどの潮間帯に繁茂する大型海藻の着生を促進する目的で、潮が引いたときにねじり鎌等を用いて、石の表面を削り、付着生物を取り除く。ヒジキ等のホンダワラ類が種を落とす前(成熟前)の6月もしくはその前後に実施する。 - 栄養塩の供給(施肥)
岩盤清掃した場所に着生したヒジキなどのホンダワラ類が大きく伸長し始める2~3月に、栄養塩の供給(施肥)を行い、その生長を促す。栄養塩の供給(施肥)は、かつて営まれたのり養殖で活用していた硫安(りゅうあん:水に溶けやすい窒素肥料)を用いる。栄養塩の供給(施肥)の方法は、岩盤清掃した場所に、潮が満ちているときに船上から撒く。 - アイゴの駆除
藻場への悪影響が懸念されている、アイゴが増加している。計画的に設置した建網でアイゴを捕獲し、除去している。
● 活動の効果
- ウニ除去区域の藻場の平均被度(3月調査)は、活動を開始した平成28年以降増加傾向にある。
- 岩盤清掃区域についても、増加傾向にあり、懸念された漁獲圧によるヒジキ生産量の減少も回避することができた。
- 活動の継続により藻場を維持することができており、今後も活動を継続し、藻場の維持に努めたい。
- アイゴの来遊場所や水温は、試験及び経験的におおよそ判明していることから、今後もアイゴが活発化する期間に重点的に除去を行っていきたい。