● 地域の現状・課題
当会の拠点は、鹿児島湾(錦江湾)奥に位置する姶良市である。
鹿児島湾奥に広がる干潟では、かつてアサリやハマグリが生息し、県内の少ない潮干狩り場として有名であった。しかし、近年これら二枚貝資源が大きく減少し、潮干狩りも禁止となっている。二枚貝資源が大きく減少した原因は、平成5年8月の豪雨災害による泥の堆積が有力である。また、その後の資源回復を抑制している大きな原因は、ナルトビエイやクロダイなどの食害と考えられ、その対策が喫緊の課題となっている。
過去、網掛川では石倉漁により年間1,500kg前後のウナギが漁獲されていたが、河川環境の変化等により、現在は推定で100kg前後まで減少していることから、かつての環境と生物資源を取り戻すことが課題となっている。
● 活動の内容
当会は、姶良市を流れる網掛川やその河口干潟を管理する網掛川漁協とその組合員が中心となって平成25年度に設立した。当会の目標は、河口干潟における二枚貝資源の維持・回復を図り、環境と生態系の保存に寄与することである。二枚貝資源の再生として、活動当初はアサリを対象に活動を展開。しかし、サポート専門家の助言等もあり、活動場所が河口に位置し、塩分濃度が低く、その変更も大きいことから、現在は淡水にやや耐性のあるハマグリを対象に取り組みを行っている。活動は、10~11月に購入した稚貝(ハマグリ)を保護区画に放流し、被覆網で食害を防ぎながら保護・育成し、定期的なモニタリングを行っている。
※現在、保護区域ではケアシェルを入れた袋網に貝を入れ、モニタリングを行っている。以前は花壇式収容施設(周囲を孟宗竹で囲い、食害防止ネットを被せた1.5m×10mの区域の呼称。この施設(区域)をモニタリングの定点としている。)を保護区域としてモニタリングをしていたが、R7.8月豪雨の影響により全ての施設が埋没し、復旧不可能な状態となってしまった。
石倉・蛇籠の活動においては、河口から約1.5km付近にある田中井堰から下流約150mの流域を活動区域とし、10個の蛇籠を設置しモニタリングを行っている。過去には九州大学と共同で調査を行っており、現在は鹿児島大学水産学部とタッグを組んで日々のモニタリングが行われている。(網掛川では田中井堰を境に淡水域と汽水域が分かれている。)モニタリングでは蛇籠で捕獲した個体の体長と重量を測定・記録するほか、新規で捕れた個体にはピットタグと呼ばれるチップを埋め込み、放流している。
石倉籠
花壇式のモニタリング定点
● 活動の効果
定期のモニタリングにおいて放流した稚ハマグリがどの程度生残しているのか記録している。例年春ごろ(4月前後)までは50%を超える生残率があり、良好な結果を得られているが、夏季から秋季の豪雨や台風などにより保護区域が埋没しハマグリが酸欠死するなど、安定した生残率が得られず苦慮している。
モニタリング時に読み込むウナギに埋め込んだピットタグには一つ一つユニークなIDが記録されており、その個体に特殊な探知機をかざすことで、個体識別が可能となっている。これにより、ウナギの生息域(分布)やその環境の調査を行うことができ、例えば漁協の行うクロコウナギの義務放流に適した場所の検討に活用することができている。
鹿児島大学に協力いただいているこれらのモニタリング結果は、他の河川の調査結果と一緒に県のウナギ資源増殖対策協議会によりまとめられた調査報告書によって関係各所に還元されており、ニホンウナギに関する知見の集積に役立てられている。
また、当組織の石倉・蛇籠の活動は令和5年8月15日に発行された姶良市の広報誌の特集記事にも取り上げられ、県広報誌コンクールで特選を受賞するなど、活動を地域住民に知っていただく上で大きなきっかけとなった。(市ホームページにバックナンバーが掲載されているためぜひご覧いただきたい。)
ウナギに埋め込まれたピットタグを専用の機器で読み込む様子