● 地域の現状・課題
・本地域は、兵庫県南東部の東播磨地域に位置しており、地先の播磨灘には明石海峡の激しい潮流によって、浅瀬が広がり、日本有数の豊かな漁場を形成している。これらの豊かな漁場の恩恵を受け、四季折々に様々な魚介類が水揚げされる。
・漁業種別としては、ノリ養殖業と漁船漁業であり、ノリ養殖業は漁業の総水揚高の8割以上を占めている。また漁船漁業では、小型底曳網漁業が中心で主な漁獲物はタコである。
・しかし、近年は海域の栄養塩不足による色落ち被害が頻発し、生産される海苔の品質や生産枚数が不安定な状況にある。 また漁船漁業においても、海底の底質硬化やヘドロ化等の影響でタコや魚類の餌料となる貝類や底生生物の減少により漁獲高が減少している。
・この事から、海底の底質硬化やヘドロ化等を解消するとともに、海域の生産物の基となる栄養塩の増加を促す対策が必要である。
● 活動の内容
・複数の漁船で海底を耕耘する事により、硬化、ヘドロ化した底質の生息環境を改善し魚類やタコの餌料となる底生生物並びに貝類の増加を促し、加えて海底に滞留した栄養塩の溶出を促進することにより健全な海苔の生産の向上を目的としている。
・海底耕耘を行う前と後で底生生物の調査を行い、底生生物の出現数等の変化を検証し、海底耕耘の効果を経年的にモニタリグしている。
● 活動の効果
・H28年度の活動から行っている底生生物の推移は、3年目という短い期間であるが耕耘後の個体数、出現種類数、湿重量のすべてで増加している。
・H25年度の活動以来、江井ヶ島海苔漁場では海苔漁期開始時(10~11月)の無機態窒素濃度が増加していることから、海底耕耘が栄養塩の溶出に影響を与えていると思われる。そして、海苔養殖では平均単価が少しずつ上昇傾向にあり、品質が向上(色落ち発生の軽度化)が見られている。
・しかし、マダコの漁獲量はここ近年減少傾向であることから、タコの餌となる貝等が成長するには時間がかかると思われる。
・この事から、海底耕耘の実施は、栄養塩の溶出は促進されるが、一方、貝等の餌料生物の資源回復には長期にわたる検証が必要である。